2018年6月のKIHARA新作展示会で、試作品としてお披露目されたTOUSEKI。プレートやカップなど日常の器を展開するKIHARAのラインナップの中で、オブジェのような佇まいと、吊るして販売できる雑貨のようなパッケージが新鮮に映った。
改良を重ね、いよいよ12月から販売を開始するTOUSEKIについて、開発担当者に話をきいた。
(取材・文:ハマノユリコ)
有田焼って何ですか?
有田を拠点とする産地商社のKIHARAは、これまで有田本店のショールームで販売をしてきたが、2017年7月に東京にも拠点を増やし、 KIHARA TOKYO をオープンした。すると、一般のお客様から「有田焼って名前は聞くけど、他のやきものとどう違うの?」という質問を受けることが多いことに気づいたという。
有田焼とは何か? 知れば知るほど一言で答えるのは難しい質問だ。
KIHARAの販売スタッフは、まず「有田焼は陶石という石を主原料としている」ことを説明するようにしている。
やきものに興味を持ち始めたばかりの方の中には、土を原料とする陶器と、石を原料とする磁器の違いをご存知ない方もいるので、実際の陶石の塊を見せ、「この石を砕いて粉にして粘土状にしたものを加工して作られている」と説明すると、驚かれたり、納得されたり。
有田焼を伝えるには?
「KIHARAでは有田焼の器を販売していますが、商品として使っていただくだけでなく、有田焼そのものに興味をもってほしい、もっと知ってほしいという思いが強くあります」
お客様にわかりやすく有田焼を伝えていくにはどうしたら良いか?
考えた末の一つの方法として開発したのが、2018年の新作「TOUSEKI」だ。
陶石そのものの形状を生かしながら、箸置やカトラリーレストといった実用品に変換し、日常生活の中にとりこむことを試みている。
陶石(原石)自体に色をつけたかのような精巧さだが、決して採石してきたそのままを商品にしたものではない。
日本における磁器発祥のきっかけは、1616年に有田の泉山で良質な陶石が発見されたことに由来するが、「TOUSEKI」は、その泉山磁石場から正式な許可を得て採石してきた陶石を、石膏で型取ることで、リアルな陶石らしさを実現している。
現在、泉山ではほとんど採掘が行われていないため、有田焼の主原料は泉山陶石ではなく熊本の天草陶石が担う。そのためTOUSEKIも天草の陶土を使い、圧力鋳込みで成形し、高温で焼き締め、やきものとしての工程をきちんと経て作られた、れっきとした有田焼だ。
「箸置としておさまりの良いサイズや形の陶石を見つけるのが大変でしたね。あと、採掘されたときの質感が感じられるものを意識して選んでいます」と語るのは、開発を担当するデザイナー、池田和浩さん。
確かに、スレート状の岩から剥がれたような直線的な平面感、塊の破片には砕けたときの凹凸が感じられる。
お菓子や雑貨のような見せるパッケージ
TOUSEKIは、箸置サイズの4形状と、スプーンやナイフ・フォークを置ける大きいサイズのカトラリーレスト1形状、全部で5形状のラインナップ。釉薬をかけず、より陶石らしさを感じさせる無釉の仕様と、無釉+グレーの釉薬、無釉+瑠璃の釉薬という半分釉薬のかかった仕様があり、15種類のバリエーションで展開する。
透明のフィルム包装で中身を見せながら販売する手法は、さながらお菓子や雑貨のよう。これまでの器の販売店とは違う販路にも期待を寄せる。
「今回はパッケージにもこだわりました。石の標本みたいでしょう? ダイレクトに視覚に訴えるデザインで、有田焼(磁器)とは?を知る、きっかけのひとつとなれば嬉しいです」
KIHARAの新たなチャレンジが、どのように市場に受けとめられるのか、反応が楽しみな商品だ。
▼TOUSEKI プレスリリース(商品詳細、価格含む)はこちらからご確認いただけます。
[ PRESS RELEASE(PDF) ]