古来より伝わる日本の伝統紋様をモダンにアレンジしたKOMONシリーズは、KIHARAの看板商品に成長した代表作のひとつだ。KIHARAオリジナル商品開発の初期プロジェクトであるKOMONシリーズは、どのようにして進められたのか。担当者に話を聞いた。
(取材・文:ハマノユリコ)
KOMONシリーズが生まれたきっかけを教えてください
いつか、和柄を使ってモダンなシリーズを作ってみたいという構想だけは温めていました。2011年当時、食器市場では豆皿が人気を集めていたので、豆皿で和モダンなデザインを展開し、毎日の生活に気軽に取り入れられる器を作ろうと企画がスタートしました。
豆皿の形からデザインをされたのですか
ベースとなる豆皿は、窯元にあった既存の型を利用しています。その豆皿のサイズやフォルムに合わせ、グラフィカルな絵付けを施すのに適した技法を検討する中で、繊細な表現ができるパット印刷で試してみようということになりました。
パット印刷というのは、絵付技法のひとつですが、
どのようなものづくりに適しているのでしょうか
パット印刷とは、繊細で複雑な絵柄でもスピーディーに器に印刷できる染付の技法です。一般的な転写紙では貼ることができない形状・曲面でも印刷が可能で、印刷時にでる呉須の“にじみ”や“ぼやけ”などにより深みのある雰囲気を出すことができます。量産に向いている技法の一つですね。
KOMONシリーズの柄のモチーフは日本の伝統紋様ですが、
数ある伝統柄の中から、どのようにデザインを決めていったのですか
まず、これまでに温めてきた日本の伝統紋様、家紋や柄をもちより、季節柄と吉祥柄に分類しました。そこからそれぞれの紋様の特徴を抽出してモダンなグラフィックに仕上げていきます。
パット印刷で表現しやすい柄、しにくい柄というのはあるのでしょうか
極端に細い線や、ベタで色(呉須)を乗せる面積が多い柄だと色むらが出やすいため、良い塩梅をデザインで調整しながら試作をしていきます。熟練の職人さんや、陶磁器用転写紙を専門に作る技術者さんのアドバイス、調整力の高さにはいつも助けられていますね。
通常のパット印刷ではタブーと言われていた製法を取り入れられたとのことですが
そうですね。KIHARAのオリジナル商品開発は実験的要素も強く、試作をしながら見いだした表現にインスピレーションをうけ、制作に生かすこともよくあるんです。一般的なパット印刷の工程では絵柄に凹凸がでないように工夫をするのですが、凹凸があるほうが表情があって面白かったので、そのまま凸凹を残しています。
1stコレクションの豆皿以降、取皿、大皿、箸置などバリエーションが増えていますね
縁起の良い柄を揃えているので、結婚祝いや引き出物などにも多くご利用いただいています。モチーフにした紋様にはそれぞれ意味が込められているので、そういったストーリーにもぜひ親しんでいただけたらと思います。